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産業保健活動を支援するための方策に関する調査研究(真岡地区)

調査研究体制
野見山一生: 栃木産業保健推進センター所長
斎藤 平三: 栃木産業保健推進センター副所長
福田 武隼: 栃木産業保健推進センター相談員
古屋  隆: 栃木労働基準局安全衛生課長
野見山紘子: 自治医科大学衛生学教室講師

調査研究結果の概要

1. はじめに

平成6年度に設置された真岡地域産業保健センターは中小企業3団体に働きかけ、産業保健活動を積極的に展開しようとしていたが、未だ、地域に十分に周知されていなかったために活動を大きく展開するに至っていなかった。そこで、小規模事業場における産業保健活動の実態・問題点などを把握し、真岡地域産業保健センターが、今後、効果的な事業展開をするための方策を立案に資するために、作業者数が30~49名の管内事業場の名簿を完備するとともに作業環境、作業状況、作業者の健康などの現状を把握するために、アンケート調査を行い、真岡地域産業保健センターの今後の活動を支援することとした。

2. 方 法

真岡地域産業保健センター管内(1市7町)の作業者数が10~99名の事業場939ヶ所に、平成7年1月に作業環境管理、作業管理、健康管理の実態に係るアンケート調査用紙を送付した。未回答の事業場総てに電話して回答を督促して回収率の向上を図った。

3. 調査成績

  1. 事業場規模の変化

    回答の事業場総てに電話で回答を督促したにも拘わらず、回答は148事業場(回収率15.8%)に止まった。なお、今回の調査の基礎となった事業場名簿が作成後数年を経ていたためか、返答のあった1~29名の事業場は90ヶ所、30~49名の事業場が25ヶ所、50~99名の事業場が25ヶ所、 100~200名の事業場が8ヶ所で事業場の規模がかなり変動していた。

  2. 衛生管理組織

    1~29名の事業規模の小さな事業場でも46%、30~200名の事業場では83%が衛生担当者を定めていた。30~200名の事業場では規模による差はなかった。衛生委員会組織率は事業場規模の小さいほど低かったが、委員会が組織されている事業場での委員会開催頻度は事業場規模による差は見られなかった。

  3. 作業環境管理

    作業環境測定実施率は僅かに20%で、1~29名の事業場は13%、30~49名の事業場は29%と著しく低かった。1回の測定費用は10万円前後であった。測定機関を選んだ理由は他からの紹介、信頼できるが夫々44%であった。これまで作業環境を改善した実績がある事業場は36%にも及んでいたが、 1~29名規模の零細事業場の改善実績は28%で事業規模の大きな事業場に比し著しく低かった。環境改善には300万円ほどの費用が必要であったが、公的補助を受けたのは1~29名の事業場1ヶ所だけであり、今後、零細事業場に対する公的補助の枠組みを拡げてゆく必要を感じた。こうした作業環境改善を提案したのは、役職者21%、作業者7%、作業主任者5%、衛生推進者3%で、小規模事業場の作業環境改善のためには役職者の衛生教育が必要であることが分かった。

  4. 作業管理

    週休1日、1.5日、2日制をとる事業場は33、25、42%で週休2日制は未ださほど普及していない。ことに1~29名の事業場では週休2日制の事業場は33%に過ぎなかった。残業時間は事務3時間であった。現場の残業時間はやや長く5時間程度であったが、100~200名の事業場の現場の残業時間が突出して長く38時間となっていた。短期間に高成長する事業場でありながら作業者が集まらないと作業者に皺寄せが来る様子が窺える。

    健康上問題となる作業はVDT作業56%、重量物取扱い24%、騒音18%、不自然な姿勢11%、夜勤11%、振動9%、レジスター作業5%であった。

    作業改善は31%の事業場で行っていたが、事業規模の大きな事業場ほど実施率が高かった。作業改善の提案をしたのは主として環境測定機関47%、作業主任者27%であった。

  5. 健康管理

    定期健康診断は殆んどの事業場で年1回行われているが、1~29名の事業場16%が殆んど定期健康診断をしたことがないとのことで、今後、検診費用の事業者負担の軽減と時間外の検診機会を設定も含め、国家施策の改善を進めてく必要があると考えられた。定期健康診断実施機関は41%が診療所、検診機関 40%、社会保険病院14%、その他8%であった。検診実施機関を選定した理由は紹介が26%、受診が容易22%、信頼できる21%であったが、安価というのは僅かに2%であった。健康異常者は主として主治医が健康指導を行っており(75%)、会社が紹介した医師による指導は22%であった。

    特殊検診はしたことがないが41%、1~2年に1度が31%であった。事業場規模別に見ると、法定通り半年に1回検診している事業場は1~49名が15%、 50~99名が8%、100~200名が38%であるので、小規模事業場、ことに零細事業場の事業者に対する啓蒙が極めて必要と考えられた。特殊検診実施機関は巡回検診機関39%、一般診療所18%、社会保険病院4%で、特殊検診実施機関を選定した理由は紹介された30%、近所20%、信頼できる13%、安価2%で、安価であることが大きな選定理由ではないことが分かった。1~29名の事業場だけに特殊検診による異常者が見出された。

  6. 事業場がして欲しい産業保健活動

    成人病予防29%、疲労・ストレス対策28%、健康相談27%、事後措置24%、健康づくり23%、快適職場づくり17%、高齢化対策14%、作業環境改善のアドバイス11%、安全衛生情報11%、メンタルヘルス対策9%、管理体制のアドバイス8%、作業方法の改善6%、医学的相談3%で、事業場がして欲しい産業保健活動は作業者の医学的問題が主で、次いで、作業環境などの改善に対するアドバイスを望んでいることが分かった。

4.考 察

平成6年度に調査した宇都宮地域の小規模事業場に比較検討したところ、1~29名の小規模事業場の衛生担当者選定率が低かった。衛生委員会の設置は必ずしも高くはないが、設置した事業場での委員会開催頻度は宇都宮地域より多かった。作業環境測定実施率は低くはあるが、宇都宮地域と大差はなかった。しかし、環境改善をした事業場は36%で宇都宮地域(26%)より多かった。作業条件改善は31%の事業場で行っており、宇都宮地域(34%)とほぼ同じであった。事業場の希望する地域センター活動の内容は宇都宮地域とほぼ同様であった。

5.結 論

零細事業場の衛生担当者選任率は低いが、環境改善に意欲を持ち改善実績のある事業場が少なくなかった。

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