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「入浴死予防のための安全な入浴法」 (12月: 武藤孝司 所長)

11月に入ると、朝晩、肌寒く感じることが多くなります。夏場の間はシャワーで済ましている人でも、暖かいお風呂が恋しくなる頃でしょう。一日の仕事を終え、ゆっくりとお風呂につかるひと時は、まさに至福の時といえるでしょう。
   ところで、入浴には科学的にみて、どのような良い効果があるのでしょうか。生理学的には、入浴には温熱作用による温熱効果、水圧作用による水圧効果、浮力作用による浮力効果という3つの効果があるとされています。温熱効果とは、体が温まることにより血管が拡張して血流が良くなり、体内の老廃物や疲労物質が取り除かれて、疲労が回復するという効果です。水圧効果とは、浴槽に横たわることにより体に水圧がかかり、特に下肢の静脈から心臓に戻る血液量が増える効果のことです。浮力効果とは、湯船につかると浮力が働いて体が軽く感じられるようになり、体重を支えている筋肉や関節が休まる効果のことです。
   このように、入浴には様々な良い効果がありますが、一方、入浴方法を間違えると、生命が危険にさらされる場合があります。入浴に関連して死亡する人は全国で年間約14,000人と推定されており、交通事故で亡くなる人(年間約4,500人)の倍以上多く、特に65歳以上の高齢者の死亡が多くなっています。死亡の原因は脳出血、脳梗塞、心筋梗塞、溺死です。寒い脱衣所で衣服を脱ぐと寒冷に曝露されて血圧が上昇するため、脳出血のリスクが高まります。高い湯温の湯船に長い時間つかると、温熱作用により血管が拡張して血圧が下がり、また発汗により循環血液量が減るため、脳の血流低下により失神して溺死したり脳梗塞の引き金になり、心臓の血流が低下すると心筋梗塞のリスクが高まります。
   それでは、このような入浴に関連する死亡を減らし、安全に入浴するにはどうすればよいでしょうか。
  公益財団法人長寿科学振興財団では、入浴事故予防のために下記のような注意点を挙げています(一部追加及び改変)。
  1.血圧が低下しやすい飲酒後や食後の入浴は避ける。
  2.血圧の安定する16時から19時頃までの入浴が望ましい。
  3.入浴前にコップ1杯程度の水を飲む。
  4.小型暖房機を置くなどして、脱衣所を暖めておく。
  5.入浴前に温水シャワーを出しておくなどして、浴室を暖めておく。
  6.浴槽は浅め(あるいは水位を低く)で半身浴が望ましく、縁に手をかけておく。
  7.ぬるめの温度(39~41℃)で、長湯はしない。
  8.入浴中は急に立ち上がらない。
  9.高齢者が入浴しているときは、家人や周囲の人がこまめに声かけをする。
 10.入浴後にもコップ1杯程度の水を飲む。
  できるだけ、このような注意を守り、快適で安全な入浴を楽しみたいものです。

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