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「屋外作業場等における作業環境管理に関するガイドライン」における屋外作業従事者の作業環境測定(平成20年度)

1 はじめに

有害な業務を行う屋内作業場については、労働安全衛生法第65条により作業環境測定を行い、その結果の評価に基づいて、施設又は設備の設置又はその整備により適切な措置を講ずることとされています。

しかし、屋外作業場では有害性のある作業に伴う健康障害の発生が認められるものの、自然環境の影響を受けやすいため作業環境が時々刻々と変化することが多く、また、作業移動を伴うことや、比較的短時間であることも多く、屋内作業場等で行われている定点測定を前提とした作業環境測定は適切ではありません。

そこで、厚生労働省では、平成17年3月に屋外作業場等の作業環境管理手法として「屋外作業場等における作業環境管理に関するガイドライン」を策定しました。今回、当ガイドラインの手法により調査を実施しました。

2 調査対象及び方法

調査対象として、ビル解体現場及び高層住宅を設定しました。また、調査方法は労働者に個人サンプラーを装着し、作業に従事してもらう。粉じん用個人サンプラーは、柴田科学製のPM4 NWPS-254 型を使用しました。当分粒装置は、4μmの粒子を50%カットする分粒特性を有します。

3 結果及び考察

(1) 解体現場

解体現場の全景を写真1に示します。当該現場おいては、4名の作業者に個人サンプラーを装着しました。

測定結果(表1)は以下のようになりました。

作業者作業内容及びマスクの有無測定時間(min)濃度(作mg/m3
PM4未満PM4以上総粉じん
A 散水、マスク有り 74 0.054 0.38 0.434
B 補助、マスク無し 75 0.53 2.19 2.72
C 補助、マスク有り 72 0.39 1.17 1.56
D 重機操作、マスク無し 59 0.34 3.25 3.59

作業内容の散水とは、発じんを防ぐために作業者がホースを持ち散水する作業であった。補助とは、重機後部での補助作業であった。

解体作業現場日おいては、周囲へ粉じんが発散するのを防ぐために散水をするが、散水は作業者のばく露低減にも有効であることが分かった。しかし、散水の効果を得ていない作業者Ⓑ、Ⓒは粉じんのばく露が認められた。また、Ⓓはバックホーの運転者であり、本来粉じんばく露は少ないと考えられたが、結果から相当のばく露が認められた。これは、運転者が慣習的に操作室ドアを開けたまま重機操作をしているためと考えられる。

(2)建設現場

高層住宅2現場にて実施しました。いずれも10階以上の集合住宅です。

一般的に、コンクリート躯体の構造物に対しては、はつり作業があります。はつりとは、コンクリートを削ったり、切ったり、穴を開けたりする作業であり、建設現場ではもっとも粉じんの発生する作業です。調査対象として、それぞれの現場でのはつり作業によるばく露測定を実施しました。

写真2が作業風景です。同写真は電動ピックによるもので、他の現場では手持ちグラインダーによる作業も行われていました。表2 に結果を示します。表中のⒺ、Ⓙはそれぞれはつり作業者を、①、②は測定日を示します。Ⓔは電動ピックによる作業であり、Ⓙはグラインダーによる作業です。また、比較として、室内造作のタイル貼りⒾ及びドア、サッシ枠の溶接作業Ⓚを示します。はつり作業者のⒺ及びⒿは、測定日よる結果の差はありますが、かなりのばく露があることが認められました。当然、防じんマスクを着用の上の作業ですが、これだけの粉じんに曝露しているとなるとその管理には十分に配慮すべきと考えられます。

一方、Ⓚは溶接作業であり、多量のばく露が認められました。また、Ⓘはタイル接着が主な作業ですが、時折、接着面にタイル形状を合わせるために、グラインダーによりタイルの研磨、切断を実施し、その際の粉じんにばく露していました。これらの作業についても、マスク着用が必要と考えられます。

はつり作業の測定結果

作業者測定時間(min)濃度mg/m3
PM4未満PM4以上総粉じん
Ⓔ① 35 6.17 13.66 19.83
Ⓔ② 40 13.9 49.8 63.7
Ⓙ① 16 1.55 55.0 56.6
Ⓙ② 20 71.6 96.4 168.0
Ⓘ② 64 0.69 3.50 4.19
Ⓚ① 28 2.86 3.14 6.00

4 まとめ

(1)解体現場では、周囲への発じんを防ぐため散水を行っていますが、現場が広くその効果が充分ではない。従って、ばく露防止には防じんマスクが重要なアイテムであり、その管理にも注意すべきと考えられるます。

(2)様々な作業が混在する建設現場では、はつりや溶接などの粉じん発生作業に従事する作業者は防じんマスクを着用しています。しかし、ぼくろ粉じん濃度は多量であり、ばく露防止を効果的に行うためにその管理が重要であると考えられます。

(3)以前より安全には配慮されている建設業において、粉じんへのばく露にも注意しなければならないことを示しています。当該調査結果は、今後の建設業における衛生教育の資料となるものと考えられます。

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