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「うつ病の復職について」 ( 5月: 増茂尚志 相談員 )

 うつ病のために、何年も復職できない人たちのために、職場では、試し出勤制度や職場復帰訓練制度の整備が進み、治療的立場からは、リワークと呼ばれる、復職のためのリハビリテーションプログラムを提供する治療施設が増えている。
   私が、普段勤務している栃木県精神保健福祉センターでは、平成21年度から、3か月を1クールとする「うつ病復職デイケア」を開設し、年間2回開催している。週1回型のプログラムの利点は、毎日、リワークに参加できない方でも参加できる可能性が高いことである。週1回のプログラムにもかかわらず、プログラム終了後、直ちに復職する人たちが2~3割いる反面、毎日型のリワークへの移行や復職自体を避け、1~2年間、週1日型のプログラムへの参加を繰り返す人もいる。
   このように長期の復職困難事例は、療養期間が十分に保障されている職場にしか存在しない。それぞれの参加者には、そのひと固有の個人的状況と職場の事情があるため、その判断の是非については論じない。
   しかし、我々の「うつ病デイケア」参加者には、そのような方たちが参加しており、このような特徴に対する支援の方法を検討する必要に迫られている。
   支援が困難なのは、自らは何も主張せず、ひっそりと休養を継続するタイプである。
   自分の何が問題で、何を変えればよいかを理解しようという意識が乏しい人たちである。このような特徴は、「引きこもり」と呼ばれる状態のひとに顕著にみられる。その特徴は、うつ病の症状は乏しく、しかし、復職には強い不安が伴い、行き詰まっているのに、それを認識して解決できない自分の葛藤を意識しにくいことである。したがって、何を治療の目標にしたらよいのか不明なタイプが多い。このような方は、実は治療の対象として認識してもらえないことが多いのも実情である。
   我々のうつ病デイケアでは、このような人たちに対しては、何が治療的に有用なのか検討しているところである。もどかしいが、このような方たちには、安易に内省を迫るより、仕事に対する態度の問題にして、治療というより、SSTやスキルトレーニングに準じた取り組みが必要ではないかと感じている。多くは、自己の傷つきと向かいあえる程度の自覚や気づきが生まれない限り、別の職場に就職しても同様の行動が起こる可能性が高いのである。
   今後の治療経験を積み重ねながら、さらに検討したいと考えている。

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