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「 仕事、それと映画の思い出 」   (4月; 杉澤 誠祐  相談員)

新型インフルエンザの職域における対応についての研修会の講師などを務めたためか、時に会社の危機対応についてのアドバイスを頼まれることがあります。そんな際に、肩書は「危機管理コンサルタント」、以前はどこかの役所で危機管理の部署に勤めていて、退職して今のお仕事をされているという、初老の紳士と一緒になることがありました。大変温厚、実直な方で、穏やかな物腰、先方の会社の若い方にも丁寧な物言いをされる、そういう方が、ある時声を荒げて云いました。「首が落ちる時に、髭の心配をしてどうする!」
 キッカケは緊急時の連絡体制について話し合っていた時、会社の担当の方が、この方事ある毎につまらない理由で色々言う方で、こちらの提案に難色を示し、「そんな直接役員・社長というのは、部長の立場もありますし、部長・本部長をすっ飛ばしてというのは、職制上もちょっと‥。」
 そこで僕が「野伏り来るだぞ。」と続けると、コンサルタントの方は「ドキッ」とした顔をされていましたが、会社の部長がすかさず「やるべし」と云った時の、部長とコンサルタントの笑顔は今でも覚えています。
 会議が終了して解散となった時、部長とコンサルタントの二人が、誘うでもなく僕の方に来て、「あの映画、いつ、どこでご覧になりました?」映画の題名は「七人の侍」、一連のやりとりは劇中の有名なセリフです。
 ひとしきり映画を観た時の思い出話に花が咲いた後は、誰云うとなく仕事の話になりました。そこでの結論が「あの映画には、日本で危機管理を担当する時に遭遇する困難の中で、本に答が書いてないことの答が全部詰まっている。」でした。
 くだんの映画、皆さんご存知だとは思いますが、野武士に襲われ続けた村の百姓達が、侍を雇って野武士と戦うことで自分たちの村を守る、というストーリーです。
 トップである村の長老の決断「侍を雇う」ということに、一応賛成していながらも内心不満を持つ者。自分の家が守られないことで、堂々と反旗を翻す者。侍の側でも、村の者が落ち武者狩りをすることを知り、村を守ることに、やる気を失う者。侍のリーダーである主人公官兵衛は、こうした集団を束ね、率いて野武士の一団と戦います。そして最後の決戦では、文字通り一丸となって戦い、最後の勝利を得ます。主人公の立場は、まさに外部から呼ばれて危機管理を担当する立場そのものです。コンサルタントの方に「そういえば○○さんは官兵衛、部長は黒兵衛といったところですか。」と云ったら、両名ともまんざらでもない顔をして微笑んでいました。
 若い頃に観た時は、ただストーリーの面白さだけを楽しんだ映画が、歳を取り人生の経験を重ねることで違った楽しみを与えてくれることに気が付いた一瞬でした。

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